今、話題の本『ザリガニの鳴くところ』を読みました。
派手さはなく、どちらかというと地味なイメージで読みはじめましたが、とても奥が深い小説でした。
家族に見はなされ、たった一人で生きていく少女の姿を描いたストーリー
本格ミステリーが好きな人にも、生物学に興味がある人にも、読みごたえのあるオススメの1冊です。
そして、孤独を感じている人にも読んで欲しいと思いました。
- 本当の孤独とはどういうものなのか
- 希望や生きる勇気はどこから生まれるのか
- そこから学べることはあるのか
教えられることがたっぷりあります。
『ザリガニの鳴くところ』の内容と読んだ感想をお伝えします。
話題作!『ザリガニの鳴くところ』
『ザリガニの鳴くところ』は、2020年3月にハヤカワ書房より発行されました。
著者は、ディーリア・オーエンズ。
ジョージア州出身の動物学者です。
現在はアイダホ州に住み、グリズリーやオオカミの保護、湿地の保全活動を行っている。
69歳で執筆した本作が初めての小説である。
と紹介されています。
共著で出版した本や論文はあるようですが、
初めての小説がベストセラーってすごいです!
2019年・2020年と、アメリカで一番売れた小説で、2021年本屋大賞の翻訳小説部門第1位となっています。
あらすじ
1952年、主人公の少女、カイヤは6歳でした。
家族に見捨てられ、湿地の小屋でたった一人、残されてしまいます。
寂しい気持ちを抱え、カイヤは自然の中で大地を愛し、生き物を友達にして成長していきます。
生きる術を自分で身につけ、できるだけ人と関わらずに毎日を過ごしていくカイヤ。
しだいに村の人々は、カイヤのことを「湿地の少女」と呼び、さげすむようになっていきました。
ストーリーは、カイヤの成長とともに、ある事故が起こった年と交差しながら進んでいきます。
1969年、チェイスと呼ばれる青年の死体が発見されますが、事故か他殺か謎は深まり、捜査は難航します。
「ザリガニの鳴くところ」はどこ?
舞台は架空の村ですが、カイヤの住む湿地は、アメリカのノース・カロライナ州近くのディズマル湿地がモデルらしいです。
タイトルにもなっている「ザリガニの鳴くところ」とは、話の中でこう書かれています。
実際に、ザリガニって鳴きそうにないけど、それが聞こえるくらい自然な場所ってことかな。
カイヤは、古い丸太小屋がある場所をそう呼ぶことにして、隠れ家にしながら、静かに暮らしていました。
孤独なカイヤの生き方
カイヤは生きていくのに必要なモノを手にするため、自分で貝を集めてお金に換える方法を思いつきます。
ボートで行ける船着き場の店には、親切な黒人の夫婦がいて、カイヤの心のよりどころになっていきました。
学校にも行けないカイヤに、兄の友人でもあったテイトが、勉強を教えてくれたり、本を持ってきてくれるようになります。
そのおかげで、カイヤは読み書きができるようになり、自ら集めた自然や生き物たちのカケラをコレクションしていきます。
『ザリガニの鳴くところ』の読みどころ
読みどころを私なりに紹介してみます。
あまり、詳しくは書かないようにしていますが、読みたくない人は飛ばしてください。
離れ離れになってしまった家族
7歳で一人ぼっちになってしまったカイヤですが、原因は父親でした。
耐えきれなくなった母に姉や兄たちが、カイヤだけを残して出ていったんです。
大好きだった母に、1番年が近かった兄のジョディがいなくなったときの寂しさは、とても大きいけど、カイヤなりに父親とうまくやっていく方法を見つけます。
でも、それもいっときのことで、あることがきっかけで父親まで出ていってしまいます。
- 離れた家族との再会はあるのか?
- 母親の居場所や本当の気持ちを知ることができるのか?
恋の行方
孤独の中でも、カイヤが必死に生きる姿は強くたくましく、ときには輝いて見えてきます。
女性らしくなり、恋心も出てくると、気にかける男性も出てきますよね。
人とはほとんど関わりを持たずに生きてきたカイヤですが、恋の行方はどうなるでしょう。
子どもの時から身につけた生きる術
子どものときから、自分でお金を稼ぐ術を身につけるため、頭を使ってきたカイヤ。
親切なテイトのおかげで読み書きもできるようになると、それはどんどん暮らしの支えになっていきました。
その生き方は、本来の人間らしい姿に感じてきました。
自然の中で生き物たちをよく観察して記録したり、絵を描いて暮らすカイヤがうらやましく思えるほどです。
完璧なラスト
静かな村で起こった事故の真相にもせまります。
まだ若いチェイスは、ある沼地で死んでいました。
- カイヤとチェイスの接点は?
- 真相は?
ミステリーとしても、後半は読みどころ。
ですが、それ以外にも読者をあっと言わせるラストが待っています。
読んだ感想
今までに読んだどの本とも、ぜんぜん雰囲気が違う内容でした。
海外小説は他にも読んだことがありますが、こんなにも孤独を感じて、しかもミステリアスなストーリーは初めてです。
時代が一昔前だからか、懐かしさを感じる部分もあり、その時代の話だからこそ描けた内容でしょう。
本当なら、カイヤのような立場になったら、ここまで強く生きることはむずかしいと思います。
子どもがここまで覚悟を決めて、自立するのは並大抵ではできません。
だからこそ、真に自分の力で生き抜いた、カイヤの姿に惹かれる部分が多いです。
おしゃれができなくても飾らなくても、自然の中で生きる人は本当に美しいんじゃないかと思いました。
今のこの、まだまだ閉塞感がある状況で読むのにも、ピッタリの小説だと思います。
気持ちの持ちようが変わるかもしれません。
最後に
『ザリガニの鳴くところ』を紹介しました。
じっくり読める長編なので、年末年始に読むのにもオススメです。
話題作だし、気になっていたら、ぜひ読んでみてください。