宮部みゆきさんの大人気シリーズ「三島屋変調百物語シリーズ」。
6巻目となる『黒武御神火御殿』を読んだので感想をお伝えします。
三島屋変調百物語が好きな人は多いでしょう。
私もずっと読んできましたが、少しあいだが空いていて、久しぶりでした。
前作の『あやかし草紙』で、いったん第一期が終わっていたからです。
でも、「百物語まではまだまだだったはず。」と思い出し、気づけば第二期がはじまっていました!
さすが!宮部みゆきさん、読ませてくれる!
何度も感心しながら読み終えました。
今回も、長かった!
コレまで通り一話一話が長いけど、最後のお話が特に長かった!
読みごたえじゅうぶん、怖いけどおもしろい『黒武御神火御殿』(くろたけごじんかごてん)を紹介します。
宮部みゆきの三島屋変調百物語とは
宮部みゆきさんファンなら、「三島屋変調百物語」もよく知っているかと思います。
が、ちょっと振り返ってみます。
三島屋というのは、江戸で人気の袋物屋。
心に深い傷をおった、姪のおちかを案じてはじめたのが百物語です。
それも「変わり百物語」と言い、ちょっと変わったお話を集めるというもの。
ただし、作り話でなく、実際に体験したことを語ってもらいます。
三島屋の黒白の間と名付けられた座敷にて語られ、聞き手がおちかです。
「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」というルールがあり、名前や場所などは明かさなくてもよくて、仮名でOK。
徐々に「変わり百物語」のことは広まり、順番待ちになることも。
なかなか人に話せずに胸にしまってきた、怖い体験や不思議なできごと。
それを聞くことで、おちかの心がどう癒やされてきたのか、も読みどころもひとつです。
シリーズだからこそ、宮部みゆきさんならではの連作短編集「三島屋変調百物語」。
長編シリーズのオススメとして、過去にも紹介しています。
>【長編小説のおすすめ10作品はシリーズ本】時代小説からファンタジーまで
できれば、一番はじめの『おそろし』から読むのがオススメです。
だんだんと迫力が増し、読んだあとの充実感も一冊ごとにアップしていきます。
怖い話と言っても、不思議で面妖な話といった内容です。
実際には起こるはずがない内容だから、安心して読めます。^^
1巻目から、あやしい話に引き込まれました。
怖いのにおもしろさあり、悲しさありで、それぞれのお話がとても魅力的です。
「三島屋変調百物語」の第二期シリーズ
第5巻の『あやかし草紙』は、シリーズ第一期の完結編となっていました。
だから、しばらく次は出ないのかと勝手に思っていたら、定期的に発売されていました。
2021年3月に第7巻『魂手形』
『あやかし草紙』で、聞き手のおちかがお嫁に行き、そのあとは三島屋の次男である富次郎が引き継ぐことになっていました。
富次郎も奉公先で大怪我を負い、戻ってきた身。
どう、聞き手をつとめるのだろう。
と思いながら、ちょっと心が遠のいていました。
が、どんどん続きが出そうなので、追いつかないと!と思い、読んだのが『黒武御神火御殿』です。
『黒武御神火御殿』を読んだ感想
三島屋変調百物語六之続の『黒武御神火御殿』
入っているお話はぜんぶで4つ。
1話目から数えると、28~31話となります。
- 第28話「泣きぼくろ」
再会した友が語り始める一家離散の恐ろしい運命。 - 第29話「姑の墓」
村の女たちが<絶景の丘>に登ってはならない理由。 - 第30話「同行二人」
妻子を失った走り飛脚が道中めぐりあう怪異。 - 第31話「黒武御神火御殿」
異形の屋敷に迷い込んだ者たちを待つ運命。
1話1話が長いです。
語り手が話し出すと、ページに文字がずっと続いて、息をつく間もないくらいに話が続きます。
行が開くところがないから、読む方もなかなか区切りがいいところまでやめれません。
それが、この不思議な話に引き込まれていく理由でもあると思います。
すぐに読み終わるのももったいないから、1話を数日かけて読んだり。
でも続きが気になるから、なかなかやめれなかったり。
思い返せば、今までの「三島屋変調百物語」でも、長い1話を一気読みしたこともありました。
本のタイトルともなる「黒武御神火御伝」は最後の4話目ですが、このお話が長かったです。
この本のページ数はぜんぶで569ページ。
4話目だけで約半分近くあります。
語り手が訪れるまでの様子がていねいに書かれていて、それがこの話の重要さというか、重々しさを表してもいます。
ど迫力のお話でした。
もちろん、他のお話もとても楽しめました。
いつもながらに、「そこで、その展開になる!?」「やっぱりそうなる!?」などと、想像しながら読む楽しさは格別です。
体験した語り手にしてみれば、恐怖から立ち直るまでに時間がかかるのは当然でしょう。
この黒白の間に来るまでに、だいぶん長い年月がたっています。
誰かに聞いてほしい。
そんな思いで訪れる語り手の話を、うまく聞くのはふつうの人ではむずかしい。
ただ、聞くだけでいいとしても、心の広さがないと聞けないと思います。
聞き手の表情や合いの手で、語り手の気持ちも変わってきます。
おちかはそこのところも上手にできていたけど、「富次郎はどうだろうか」と、少し心配な読者も多かったかもしれません。
しかも、富次郎に来る話は、もっと面妖さが増している気もします。
聞き手がおちかなら、もしかしたら来なかった話もあったとされます。
「なきぼくろ」は、特にそうでした。
語り手は、富次郎の知り合いだったことから、話せる勇気が出たと思われます。
でもどの話も、富次郎なりにちゃんと聞いては、受け止めていました。
安心して帰っていった語り手もいました。
富次郎さん、やるじゃない。
そう思った『黒武御神火御伝』
めちゃめちゃおもしろかったです!
期待を裏切りません。
いろんな怖さが入った豪華な1冊で、読みごたえはじゅうぶん。
百物語のうち、まだ30話くらいしか進んでいません。
まだまだ不思議なお話、続くのかと思うとワクワクもしてきます。
短編と言っても、長編にもなりそうなお話もあるのに、
やっぱりすごいな、宮部みゆきさん。
あらためて思いました。
最後に
宮部みゆきさんの三島屋変調百物語シリーズ『黒武御神火御殿』を読んだ感想でした。
続いて『魂手形』も読み終えたので、またご紹介したいと思います。
変わった話を聞いていくうちに、富次郎自身やまわりがどう変わっていくかも楽しみです。
それにしても、このシリーズを書きながらも、他のシリーズも出てきているんだから、何度も言うけど、やっぱり宮部みゆきさんはすごいです。
ファンとしては読む本がいっぱいあってうれしいけど、最後まで読み切りたいという願いもありますね。
追いついていかないと。
まだまだ元気で入れますように。