原田マハさんの『リボルバー』を読みました。
『リボルバー』は、画家であるゴッホとゴーギャンの謎に迫った物語。
ゴッホの死のシーンについても描かれています。
ゴッホは拳銃を使い自殺したと言われていますが、本当にそうなのか、もしかしたら他殺?
そんな説も実際にあるようですが、『リボルバー』ではどんな展開になっているかが気になるところ。
『リボルバー』は史実に基づくフィクションです。
読んで、自分だけの物語にたどり着くのもいいかもしれません。
『リボルバー』のあらすじと読んだ感想をお伝えします。
原田マハ『リボルバー』のあらすじ
主人公は、高遠冴(たかとおさえ)。
CDCという、パリの小さなオークション会社に務める30代の女性です。
社長のエドワール・ギローと同僚のジャン・フィリップ・ブノウの3人で、いつか大物を出品できることを期待しています。
冴は両親の影響もあり、子どものときからアートに興味をもち、パリ大学では修士号を与えられたほど。
いずれゴッホとゴーギャンについての論文を書くつもりで詳しく調べていて、その専門家でもありました。
そんな冴がいるCDCに、サラと名乗る女性があるものを持って出品依頼をしてきます
それは錆びついた1本の拳銃、リボルバーでした。
サラが言うには、このリボルバーはゴッホの死に大きく影響していると言います。
サラの言うことは真実なのか?作り話なのか?
冴たちの、真相を突きとめるための調査がはじまります。
ゴッホの最後の場所、オーヴェール=シェル=オワーズにも向かうのでした。
ネタバレあり!の内容
ここから先は、もう少しネタバレを入れて紹介するので、気をつけてください。
サラはリボルバーを「ゴッホを撃ち抜いたもの」だと言い、それを証明できるのは「ファン・ゴッホと死」という2016年開催の展覧会に出展されたことだと打ち明けます。
その真相を確かめるため、冴はファン・ゴッホ美術館のキュレーターである人物に会いに行きます。
サラから預かっているリボルバーの画像を見せると、展覧会に出展されたものと同じではありませんでした。
出展されたリボルバーが発見されたのは、約50年前。
オーヴェール=シェル=オワーズの村内の畑で、土を耕していた農夫が見つけたのだそうです。
ゴッホは、人生最後の十週間を下宿屋を兼ねた食堂であるラヴー亭で過ごしていましたが、自殺に使った拳銃は、そのラヴー亭の主人の護身用だったらしいのです。
それを聞いて3人が次に向かったのが、オーヴェール=シェル=オワーズでした。
一時期、ラヴー亭にそのリボルバーが飾られていたこともあり、運営している団体の代表者、リアム・ペータースから話が聞けました。
残念ながら、ペータースがラヴー亭を買い取ったときには、もうリボルバーはなかったそうです。
しかし冴たちは、ペータースから別の重大な話を聞かされます。
ペータースはサラと知り合いで、サラが持っているリボルバーのことを知っていました。
サラはそのリボルバーのことを「ゴーギャンのリボルバー」だと言っていたと言うのです。
サラはある人物に言われた場所を探して、このリボルバーを見つけたんだと。
ペータースから話を聞いた3人は、帰路の車内でそれぞれが考えをめぐらせます。
ギローはとんでもないことを言い出しました。
「ゴッホはゴーギャンに撃たれたんじゃないか」と。
本の内容の後半は、サラから冴だけに伝えられた話から、もっと深く掘り下げられます。
ゴッホの死に至るまで。
そして、調査したリボルバーからわかったこととは?
ゴッホが自殺に使ったとされるリボルバーは、2019年6月19日、パリで競売にかけられ、16万ユーロ(約2000万円)で落札されたことは事実です。
https://jp.reuters.com/article/france-vangogh-gun-idJPKCN1TL03P
『リボルバー』読んだ感想
本の表紙がゴッホの「ひまわり」だから、てっきりゴッホの話かと思っていたら、ゴーギャンに関する内容も多かったです。
「ひまわり」は、ゴーギャンにとっても大事な作品でした。
ゴッホとゴーギャンが、アルルで共同生活をしていたことは有名です。
ゴッホがアルルで描いたひまわりの中で、ゴーギャンが特に気に入ったのが、この表紙のひまわりだったんです。
去年、美術館で観てきました。
>ゴッホの【ひまわり】1番完璧な作品?ロンドンより初来日!
そして、カバーをめくると現れたのはゴーギャンの「肘掛け椅子のひまわり」でした。
『リボルバー』で、ひまわりはひとつのキーワードだったことにラストで気づきます。
ゴッホとゴーギャンの共同生活は、長くは続きませんでした。
関係は悪化していき、起こったのがゴッホの耳切り事件。
個性の強い芸術家の共同生活というのは、むずかしそうだね。
ゴッホの絵かきとしての人生や死を遂げるまでの話は、同じ原田マハさんの『たゆたえども沈ます』に描かれています。
私も読んでいたので、『リボルバー』は物語の流れを理解しやすかったです。
>『たゆたえども沈まず』の感想!ゴッホの奇跡の絵『星月夜』
『リボルバー』では、ゴッホの生活に深く関係があったゴーギャンについても、もっとよく知ることができました。
もちろん、『リボルバー』だけでもじゅうぶん楽しめるよ。
ゴーギャンは家庭がうまくいかず、数人の愛人がいたんです。
その中には13歳や14歳の少女もいたことには驚きでした。
最後まで一人で孤独だったゴッホと比べると、ゴーギャンは自由勝手なように見えるけど、実際のところは苦悩だらけだったのかもしれませんね。
ゴッホもゴーギャンも環境は違うものの、二人とも絵を描くことにとりつかれて、同じように寂しさも抱えていた気がしました。
そんな苦しみから生まれた作品も多いんですよね。
ただ、ゴッホには弟のテオがいてくれて、ずっと支えてくれたことが何よりも大きかったのではないでしょうか。
テオは、ゴーギャンにとっても大事な人だったみたい。
ゴッホには、生きている間にもう少し光を与えてあげたかったな、とつくづく思いました。
ずいぶんあとには、多くの人に支持されてゴッホファンがたくさんいることを、当時のゴッホや弟のテオに教えてあげたい気持ちになります。
『リボルバー』は、ゴッホの死を違う観点から見つめなおしたストーリーです。
ゴッホは拳銃で自分の左胸を撃ち、自殺したと言われていますが、ここ数年はいくつかの検証から他殺説も浮上してきているそうです。
参考サイト:
https://www.excite.co.jp/news/article/Tocana_201411_post_5254/
原田マハさんは、また違う視線で描かれています。
後半からが読みどころ
読みどころは、とにかく後半ですね。
ゴーギャンの私生活からゴッホとの関係性まで、ある人物によって語られます。
ゴッホとゴーギャンを追い続けてきた冴にとっては、衝撃の内容も含まれていました。
それを伝えられた冴の反応にも注目です。
ゴッホはどうやって死んだのか?
サラのリボルバーは誰のもの?
そして出品されるのか?
真相がわからない歴史上の出来事を、物語として読むのはとても楽しいです。
自分なりの想像をふくらませて、自分のイメージで自由に思い描いたらいいと思います。
ラストもとてもよかったです。
あと、
オルセー美術館、行ってみたーい!
まとめ
原田マハさんの『リボルバー』を読みました。
ゴッホとゴーギャンにまつわる話。
二人の関係は有名ですが、シーンごとに画家たちの感情も伝わってきます。
マハさんが、二人の画家を尊んでいる印象も持ちました。
気持ちのいい読後感が味わえる原田マハさんのアート小説が、やっぱり好きです。
まとめた記事もあるので、よければ参考にしてください。