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朝井まかて『恋歌』実在した歌人【中島歌子の壮絶な人生を描いた小説】

第120回直木賞受賞作品、朝井まかてさんの『恋歌』を紹介します。

読んでから知ったのですが、実話をもとにしたお話でした。
樋口一葉の師でもある歌人、中島歌子の人生を描いた作品です。
歴史小説であり、純愛小説でもあるお話。

息をのむ展開にページをめくる手が止まらない、一気読みしてしまう作品です。
そしてラストにこそ、この小説の本当の意味がわかります。

『恋歌』すごい小説でした。

『恋歌』のあらすじ

朝井まかて『恋歌』実在した歌人【中島歌子の壮絶な人生を描いた小説】

第120回 直木賞受賞作

幕末の過酷な運命に翻弄された女の一生を描く感動作!

幕末の江戸で熱烈な恋を成就させ、天狗党の志士に嫁いで水戸へ下った中島歌子。だが、内乱の激化にともない、彼女は夫から離され、囚われの身となった。
明治の世に歌塾「荻の舎」を主宰し一世を風靡した歌子は、何を想い、胸に秘めていたのか。
引用 Amazon紹介記事より

主人公は中島歌子
江戸の自宅で「萩の舎(はぎのや)」を開いた、樋口一葉の師でもある歌人です。

その萩の舎の門下生である三宅花圃が、病院で療養している歌子に頼まれ探しものをしていたときにある書きつけを見つけます。
それは、歌子の半生を綴った手記だったのです。

その手記を、女中の澄と読みはじめるところから話は始まります。

歌子という名前になる前は、登世(とせ)と言い、幕末の江戸で商家の娘として育ちました。

登世が、好きな人を純粋に慕う想いも素直に伝わってきます。
やっと結ばれることができたのに、一転して壮絶な過酷の日々のはじまりでもありました。

登世が出会って結婚した相手は、水戸藩士の林忠佐衛門以徳(はやしちゅうざえもんもちのり)でした。

しかし、天狗党の乱が起き、2人は離されてしまいます。
それだけでなく、登世と義妹のてつは牢獄に入れられてしまうのです。

そのあと、牢から出ることができた登世は、中島歌子として歌塾を開くことになります。

主人公の中島歌子とは

1845-1903年 明治時代の歌人。
弘化(こうか)元年、江戸生まれ。
水戸藩士、林忠佐衛門以徳(はやしちゅうざえもんもちのり)と結婚。
元治(げんじ)元年、天狗党の乱に加わった夫と死別。
のち、加藤千浪にまなび、東京小石川で歌塾、荻の舎をひらいた。
門人に三宅花圃、樋口一葉らがいる。
明治36年死去。60歳。

天狗党とは

天保年間、水戸藩主徳川斉昭の藩制改革に伴い、下級藩士を主体に結成された改革派グループ。
保守門閥派の諸生党と激しく対立。
1864年、攘夷延期を不満として筑波山に挙兵、武田耕雲斎、藤田小四郎を主導者とする一派は、心事を一橋慶喜を通して朝聞に達すべく、上洛の途についたが、加賀藩に降伏。
武田以下数百名は敦賀で斬刑に処せられた。
その後も明治維新に至るまで藩制の主権をめぐって、保守党と凄惨な争いが続いた。

『恋歌』を読んだ感想

ネタバレ含みますので、読みたくない人は飛ばしてください。

実話を元にした小説とは知らずに読み始めました。

弘化や元冶というずいぶん昔の話なのに、恋する乙女の切なさはいつの時代でも変わらないものですね。
嫁ぎ先の義妹とのやりとりなど、現代の恋愛、結婚とそう変わらない状況に感心したり、共感したりしながら読み進めていました。

すると、中盤からは牢獄での残酷さの話が続きます。
それは想像を超えるほどでした。
また、こういう歴史があったことにも衝撃でした。

印象に残った貞芳院の言葉

「水戸は藩も人も皆、貧しかった。水戸者は生来が生真面目。質素倹約を旨とし過ぎて頑なになって、その鬱憤を内政に向けてしもうた。あまりの貧しさと抑圧が怖いのは人の気いを狭うすること。気いが狭うなれば己より弱い者を痛めつける。ほんで復讐を恐れて手加減できんようになる・・・」
本の文章より引用

が心に残ります。

今の世の中の、直視できない様々な問題の根源もここにあるような気がしました。
貧しさと言っても、心(愛情)の貧しさの影響は、はかりしれない気がします。

そして、登世と義妹のてつは、ギリギリのところで、牢の外へ出ることができました。

しかし、登世の夫である以徳はすでにこの世にはいませんでした。
登世と以徳が一緒に入られた時間は、なんとも短いものだったのです。

その後、登世は何とか生き延びて、中島歌子と言う名で「萩の舎」を開きます。
まわりから見れば、恋に危ない女性に見えていたかもしれない暮らしでしたが、本当のところは最後の最後まで、以徳を想って歌を詠み続けていたのです。

このお話が、どうして門下生が手記を読む、というスタイルになっているのか。

それには、ちゃんと理由がありました。
ラストで明かされる事実。

歌子の心の葛藤や、夫であった以徳への想いが伝わってくるようです。

『恋歌』を小説として、この世に出してくれた朝井まかてさんに感謝したくなりました。

また、『恋歌』はAmazonのオーディブルで聴くこともできます。
オーディブルとは本の朗読サービスです。
>『恋歌』をオーディブルで聴くならこちら

最後に

朝井まかてさんの『恋歌』を紹介しました。

恋心は切なく、牢獄での過酷なシーンには苦しくなります。

読むと、今の時代の平和な日本で暮らせることに心から感謝します。
少しでも興味をもたれたら読んでみてください。

他にも、事実をもとにしたオススメ小説も紹介しているので、よければ参考にどうぞ。
>実話をもとにした小説・ノンフィクション【読書】おすすめ本の紹介 

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