葉室麟さんの『蒼天見ゆ』を読んだ感想をお伝えします。
実話を元にした歴史小説で、日本最後の仇討ちをした臼井六郎(うすいろくろう)を描いています。
私は歴史にはうといですが、小説でいろいろなことを知ることが多いです。
臼井六郎の仇討ちとはどんなものだったのか?
タイトルの『蒼天見ゆ』の意味は?
『蒼天見ゆ』の内容と感想をお伝えします。
ネタバレ含みますので、ご了承ください。
葉室麟『蒼天見ゆ』臼井六郎は実在した人物
読みやすい時代小説が人気の葉室麟さんですが、映画化にもなった『蜩ノ記』『散り椿』の原作者でもあります。
創作活動に入ったのは50歳からだとされています。
これからもまだまだ多くの作品を期待されていたのに、残念ながら3年前に66歳で他界されました。
私はまだ数冊しか読んでいないのですが、どの本を手にとっても安心して読めて、読みごたえのある小説ばかりなのでは、と思っています。
『蒼天見ゆ』は、実在した人物や歴史を描いた小説でした。
時は幕末。西洋式兵術の導入を進めていた秋月藩執政・臼井亘理は、ある夜、尊攘派により妻もろとも斬殺された。だが藩の裁きは臼井家に対し徹底して冷酷なものだった。息子の六郎は復讐を固く誓うが、“仇討禁止令”の発布により、武士の世では美風とされた仇討ちが禁じられてしまう。生き方に迷い上京した六郎は、剣客・山岡鉄舟に弟子入りするが―。時代にあらがい、信念を貫いた“最後の武士”の生き様が胸に迫る歴史長篇。
引用:Amazonの内容紹介より
『蒼天見ゆ』のあらすじ
臼井六郎の父、臼井亘理(うすいわたり)の若き頃の話から始まります。
日本中が開国と攘夷に揺れる時世の九州。
筑前の秋月藩執政である臼井亘理は、秋月藩の生き残りを図り西洋式兵術を導入して、新政府要人と面談し、藩への信頼を取り付けます。
しかし故郷では、世の中の変化に機敏に対応する亘理に対して反発が増していました。
そしてある夜、寝ているところを襲撃され、妻とともに斬られて亡くなってしまいます。
藩の借置は一方的で、臼井家に対して徹底的に冷酷だったため、家族や身内たちは泣き寝入りするしかありませんでした。
六郎がまだ10才、妹のつゆが3歳のときでした。
六郎は無念に駆られ、いつか父の復讐を、と固く誓います。
その後、父の亘理を切った人物が一瀬直久だとわかると、仇討ちを決意します。
六郎が19歳の時、一瀬が東京に出たことを知ると、自分も東京行きを決め、叔父を頼って上京します。
そして叔父の紹介で、剣術道場の山岡鉄舟と会い、一瀬に復讐する機会を待ちながら、鍛錬に励みました。
本当に仇討ちできるのか?
六郎が東京に出たのは1876年。
仇討ちを決めて東京に出た六郎でしたが、実は1873年(明治6年)に仇討ち禁止令が発令されていました。
それまでは、「敵討ち」と認められれば罪に問われなかったばかりか、美化されていた仇討ち。
それが、仇討ち禁止令でどんな理由であろうとも罪になることが決まりました。
結論を言いますと、六郎は仇討ちを果たします。
それが、日本最後の仇討ちをしたとして、今も語られているのです。
念願の仇討ちを果たした、六郎の気持ちはどうだったのでしょう。
「蒼天を見ゆ」の意味
本のタイトルともなっている、蒼天見ゆ。
これは、六郎の父、亘理が若い時に間余楽斎(あいだよらくさい)という人から言われた言葉です。
間余楽斎は架空の人物だと思われます。(違ったらスミマセン)
時おり、青空を眺めろ。
われらは何ごともなしておらぬのに、空は青々と美しい。時に曇り、雷雨ともなるが、いずれ青空が戻ってくる。それを信じれば何があろうとも悔いることはない。いずれ、われらの頭上にはかくのごとき蒼天が広がるのだ。
六郎は、父と母からこの言葉を教えてもらいました。
時おり思い出しては空を見上げるも、自分には青空が見えなかった。
一瀬を切ったあとでも「蒼天はいまだに見えぬのか」と・・・。
六郎はいつ、蒼天を見ることができたのか。
知りたいなら、読んでみてください。
『蒼天見ゆ』を読んだ感想
いつもつけている読書ノートに、人物相関図を書こうと思ったのですが、上手く書けず・・・。
私は、難しいことはわかりませんし、歴史にも詳しくないですが、『蒼天見ゆ』には有名な歴史上の人物がたくさん出てきました。
最後の仇討ちをした臼井六郎のことは、これまで全く知りませんでした。
仇討ち禁止令が出るまでは、こういう形で無念を晴らした人は多かったんでしょうね。
ただ、本当にそれで心まで晴れたかどうかはわかりません。
六郎のように、重い気持ちを長く背負ってしまう人もいたと思います。
両親の死は無念だったでしょうが、その恨みだけをずっと抱えて生きるのは、どれだけ心が重いのだろうとかわいそうにもなります。
六郎には六郎の人生があるし、他に自分の進む道を選択する事はできなかったのかと、思います。
現代とは違う遠い昔は、それが当たり前だったのかもしれませんが、少し寂しくも感じました。
最後に
葉室麟さんの『蒼天見ゆ』を紹介しました。
日本最後の仇討ちをした臼井六郎を描いた歴史時代小説です。
歴史の中の悲劇のひとつです。
歴史時代小説が好きな方にもおすすめです。
実話をもとにした本は好きです。
よければ合わせてどうぞ。